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KORGがアナログシンセ黎明期の伝説的メーカーARPの代表機種「Odyssey」の復刻リリースに取り組むなど、ここ数年盛り上がりの兆しを見せてきたアナログシンセ界隈が、どんどんすごい領域へと進もうとしている。

一方、ボカロやソフトシンセ全盛の時期に音楽を始めた若い世代の人などは、おじさん達が何で興奮しているのか不思議に思っているかもしれない。そこで、今回から複数回に渡って、現在(2014年2月中旬)の最新トピックであるKORGのARP Odysseyにつながる形で、アナログシンセの登場から最初の衰退、そして復活に至る歴史を駆け足でご紹介しよう。

ちなみに筆者は、1975年生まれの現在38歳。この年齢でも最初のアナログ全盛期はリアルタイムで経験しておらず(YMO全盛期が幼稚園位)、アナログシンセの魅力を知ったのは1990年代初頭あたりの最初のアナログ・リバイバル期だ。なので、1980年代前半位までの記述は資料等に由来する知識がベース、それ以降は実体験がベースということを予め記しておく。

現在のような方式のシンセサイザーが形となったのは、1960年代中期の、Moogによるモジュラーシンセサイザーの製品化が起源と言える。これは大量のモジュール同士をケーブルで結線して音作りを行うシステムのため、使用者は技術と財力を兼ね備えた一部の先進的な音楽家に限られた。

シンセサイザーの裾野が一気に広がるのは、小型キーボードの形にまとめられたMinimoog(1970年)が登場してから。冒頭に出てきたARP OdysseyはMinimoog最大のライバル機種で、両モデル共数多くの名曲に使用された。MoogやARPといったブランドが現在まで名を轟かせているのは、この時期の実績があってこそだ。

Moog、ARP共にアメリカのメーカーだが、1970年代後半になるとRoland、KORG、YAMAHAといった日本のメーカーが一気に台頭してくる。2013年にKORGが復刻して話題となったMS-20は、まさにこの時期(1978年)の製品だ。日本メーカーは低価格で高品質の機種を次々とリリースしたので、ここにきてやっとアマチュア音楽家もシンセサイザーを使えるようになり、後のテクノ・ニューウェーブシーンの形成に大きく寄与していく。

1980年代に入る頃になると、それまでモノフォニック(単音)が中心だったシンセ界に、和音を出せるポリフォニック化の波が押し寄せる。かつてのトップブランドだったMoog、ARPはこの流れに上手く乗れず、ARPは経営の失策も影響して1981年に倒産、Moogも、創業者のモーグ博士が退社に追い込まれ、メーカーとしては死に体となっていった。

ポリフォニックのシンセサイザーは、音源部分がアナログでも、コントロール部分を効率良く作るにはデジタル技術が不可欠だった。日本メーカーの台頭は、この時代の多くの分野がそうであったように、デジタル技術の進化・台頭と不可分のものだったのだ。

そんな中、電子楽器史上の「一大事件」とも言える製品がリリースされる。

(第2回に続く)