以前に比べると「家電量販店」、特に郊外型の店舗内をじっくり見ることが減っている。消耗品はAmazonで注文してしまう事が多いし、ピンポイントで見たい製品がある場合は確実に展示していそうな大型のヨドバシやビックカメラに行ってしまうので、訪れる回数自体が少ない。郊外型の店舗には、ちょっと失礼な言い方だが「どうせ知らないようなモノは置いてない」という感覚があるのも正直な所だ。

ところが先日、家族と買い物に出かけた先(郊外のショッピングモール内店舗)で時間つぶしにじっくり眺めてみると、自分の感覚の凝り固まりっぷりに気付かされるような、目からウロコものの表現をいくつも発見した。その一部をご紹介しよう。

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プリンタケーブル

まず最初に「はっ」としたのがこの「プリンタケーブル」という名の商品。


モノ自体はプリンタ専用でも何でもない、ただの「USBケーブル」だ。実際この棚の隣には、おそらく全く同じ中身の商品が「USBケーブル」という名称で売られている。

USBはそもそも「Universal Serial Bus」の略。専用とは逆の「何でもつながる」のが基本コンセプトの規格だ。大昔のパソコンではプリンタ、モデム、HDD、マウス、キーボード全てが別々のポートやケーブルで接続されていたが、USBの普及後は全てが一本化された(この中でHDD以外は既にワイヤレスが主でケーブル自体使っていない)。

しかし、それを「常識」と思うのは、既に思い上がりに等しい。世の中には、年賀状シーズンにだけパソコンとプリンタを使うようなユーザー層も確実にいて、そうした人達は「USBケーブル」なんて買いに来ない。「パソコンとプリンタをつなぐ線」を買いに来るのだ。

たとえば自分が「そうめんにつけるツユ」をスーパーに買いに行った際に「万能濃縮和風スープ」というモノしか売って無かったら「これで良いのか?」と戸惑うはず。同じモノでも「めんつゆ」として売っているから迷わず購入することができるのだ。

テレビ用、ラジオ用イヤホン

お次はイヤホン。テレビ用、ラジオ用として分かれているが、どちらも基本的には同じモノで、別な方につなぐと音が出ないなどという事はなく、違うのは、ケーブルの長さとプラグの形状のみ。

しかし、テレビにつなぐつもりで1mのものを買ってしまうと、画面の直近で視聴するハメになる。逆に携帯ラジオ用に3mを買ってしまうと、ケーブルが邪魔な上に、ストレート型のプラグに負荷がかかって断線しやすい。

ツールは、利用シーンを想像すれば自ずと選ぶべき仕様を導き出せるが、知識や関心の薄い分野にそれを求めるのはかなりハードなことかもしれない。その対策には、あえてツールの持つ可能性を狭めて規定してしまうのも有効な手法だ。

CDチェンジャー?

まさか現代の店舗内でこの単語を見るとは思わなかった「CDチェンジャー」。


既に知らない方も多いと思うが、CDチェンジャーとはあらかじめ複数枚のCDを入れておき、連続再生や選曲ができる機械で、以前はカーステレオを中心に一定数使われていた。数千枚のアルバムをiPodに入れて持ち運べるようになって久しい時代にまだそんなモノが…と思いよく見ると、

要するに、複数のCDそのものを入れるのではなく、iPodと同じようにCDから吸い上げたオーディオファイルを本体内に記録して、CDチェンジャーのように使える機能らしい。

それであれば、CD5枚などという枠にとらわれる必要は無いのでは…と考えそうになるが、世間には数枚のCDとラジオだけ聴ければ良いというニーズも確実に存在するはず。そうした層の方には、プレイリストや検索などという機能は無駄に複雑でしかなく、CD5枚のうちから1枚選ぶというのがむしろ解りやすいのだろう。

「逆」もまた真なり

今回の記事は、リテラシーの低さに合わせた表現を嘲笑しようというものではない。自分に置き換えても、例えば衣料用の洗剤などは、同じ位に過保護にしてもらわないと適切なものを選べないかもしれないし、大きく安心感を得られる事だろう。商品やサービスを提供する側にいる時は、常に心がけたい要素だ。

さて、それと同時に「逆もまた真なり」という事もある。今回例に挙げた製品はどれも、実際には「ラベルに書かれた以上のポテンシャル」を持っていて、本質を理解していれば元々示されていた範囲以上に活用することができる。こうしたものは分野を問わず世の中に溢れており、効率、コスト、利便性の向上に有効な例の枚挙にいとまがない。

様々なモノに対して「何故、こう定義されて売られているのだろう?」と想像力を働かせることは、楽しく、そして自分の「引き出し」を広げるのに大変有効な行いだ。