我が家のリビングに、スマートスピーカーのAmazon Echoがやってきた。

まだ物珍しさから、家族皆が暇さえあれば「あれくさ、あれくさ」言ってるので、何やら博多弁が飛び交っているような雰囲気だ。

オーディオ端子の正体は?

初めてのスマートスピーカー購入とあって様々な感想を持ったが、中でもひときわ印象に残ったある「勘違い」があった。

こちらはAmazonに掲載されている、Echoの図解。この中の「3.5mm ステレオジャック」に注目して頂きたい。

一般的に、スピーカーに付いているオーディオジャックと言えば、音楽プレイヤーやスマホを繋いで鳴らすための「音声入力」を指す。スマート“スピーカー”であるEchoの端子も、当然「入力」であると思って疑わなかった。

ところが、実物をよく見ると

AUX OUT、つまり、他のスピーカーから音を出すための「音声出力」だったのだ。

“スピーカー”なのに、持っている端子は音声出力。一見奇妙なこの仕様は「Echoに与えられたアイデンティティ」を如実に物語っている。

スピーカーという名で売られているものの、Echoの本質はあくまで「AIアシスタント」。スピーカーは部品の一部に過ぎず、音声は他のデバイスから出しても構わない、というのが製品コンセプトの本音だろう。

もしiPhoneが「コンピュータ」だったら

こうした巧みな言い換えが成功した好例が「スマートフォン」だ。「電話」でありながら、音声通話をほとんど使わないという方も多いのではないだろうか?(筆者も正直、スマホに電話がかかってくると、ちょっと「鬱陶しい!」とさえ思ってしまう(笑))。

スマホの本質、つまり与えられたアイデンティティは電話機ではなく「個人用の小型コンピュータ」だ。

では、例えばAppleがiPhoneを発表した時「コンピュータです」と言っていたら、これ程の速度で普及しただろうか?名前は…パーソナルだとパソコンになっちゃうので…ポケットコンピュータ!いや、それは懐かしアイテムだ。「Mac nano」もしくは「nano Mac」?林檎信者にしか売れ無さそう…。どうやってもスッキリしない。

それが「スマートフォン」という名を与えられるだけで、一気に革新的で便利なアイテムに感じられるから不思議だ。iPadをはじめとするタブレットがイマイチ中途半端感を拭えないのは、最初から「タブレット」という新しいカテゴリのモノであり、浸透に時間を要するからだろう。

Echoを始めとするスマートスピーカーにも、この図式があてはまる。例えば「ホームAI」という名前だったら?全知全能のもの凄いアイテムか、はたまたモノ好き向けの商品か…少なくとも一般の人が「買ってリビングに置いてみるか」と思うには少しハードルが高い。

しかし「スピーカー」であれば、少なくとも音楽やラジオを聴く程度には確実に使えるのが想像できる。そうやってまんまと、家庭の日常に「AIの穴」を空け始めているのがスマートスピーカーという存在だ。

こやつらはスピーカーと言いながら、リビングに高感度のマイクを堂々と設置することにさえ成功している。我々が面白がってあれくさ、あれくさ言う度に、着々とAIの学習が蓄積されていると思うと、なんとも21世紀的で楽しい気分だ。

Bluetoothを使えば「入力」もできる

ところで、Echoの端子は出力だったが、Bluetooth経由で接続してスマホの音を鳴らすことは可能だ。Alexaアプリの「設定>Bluetooth」から機能をオンにすれば、普通のBluetoothスピーカーと同じようにペアリングすることができる。

うちが購入したEchoはサブウーハーが内蔵されており、サイズの割にはズッシリ重い音がする。「オーディオ好き」に受けそうな音ではないが、360°に音が拡散する無指向性スピーカーの効用もあって「聴きやすい」仕上がりになっていると言えるだろう。

Echoについては、今後も色々と実験などを重ねて行きたい。