世界随一のアナログシンセブランドであるMoog Music社の2013年新作「SUBPHATTY」のレビュー動画を4本公開した。

まずは、思いのままに試奏して録音したものから抜粋したサウンドを、外観のイメージ映像と一緒に。

一聴して、Moogブランドのイメージに違わず非常に太くヌケの良いサウンドであることがおわかり頂けるはずだ。動画の編集完了後にいくつかの環境でチェックしたが、スマホ(iPhone5)のスピーカーで聴いても太いサウンドの片鱗がわかるのは驚きだ。

2本目はオシレータの解説。SUBPHATTYのオシレータは、三角波→ノコギリ波→矩形波(以降、パルス幅の変更)が無断階で滑らかに変化するようになっている。丁度、

Moog社のMoogerFoogerシリーズ「MF-107」と仕様が似ている。SUBPHATTYはこの仕様のオシレータを2個と「SUB」の名の通りサブオシレータ、そしてノイズジェネレータを装備している。このノイズもかなり個性の強い音をしているので、是非動画で確認して頂きたい。

3本目はフィルターについて解説。Moogのシンセと言えば、Moog博士の特許でもある24db/octのトランジスタ・ラダーフィルターがシンボルのような存在となっているが、SUBPHATTYのフィルターも実に素晴らしい味わいとキレを持っている。さらにSUBPHATTYでは、新たに装備された「MULTIDRIVE」で豊かなサチュレーション効果を得ることが可能だ。

実はこうした歪み系のパラメータはフィルターの味わいを弱めてしまう場合も多いのだが、MULTIDRIVEはかなり強くかけても絶妙な所でバランスが保たれている。Moogの歴代ラインナップの中で「SUBPHATTYの個性」を形作るのに一番寄与しているのがこの部分と言えるだろう。

4本目はモジュレーションの解説。SUBPHATTYのLFOには三角波、矩形波、ノコギリ波x2(方向違い)、ランダム(サンプル&ホールド)となかなかバラエティに富んだ波形が用意されている。特筆すべきはRATEのレンジで、下は0.1Hzから上は100Hzと非常に幅広く設定できる。PITCH、FILTER、そしてWAVEの各々に個別に適用量を調整できるので、ポテンシャルはかなり奥深い。

さらに、LFOとの択一式にはなってしまうものの、フィルターのエンベロープもピッチや波形へのモジュレーションソースとして使用できるので、オシレータシンクを行う場合などに重宝する。SUBPHATTYのノブの数は初代Minimoogとそれ程変わらないが、そのシンプルさの中での音作りの幅はかなり広いと言える。

PUBPHATTYはPitch、Filter、Ampに対してのCVを入力できるので、動画ではDoepfer A-100システム中のLFO(A-146 LFO2)を使って外部からモジュレーションを加えるデモも行っている。

私はこれまで、MoogのPHATTYシリーズにはあまり魅力を感じていなかったが(パラメータを一望して音作り出来ないのではアナログシンセの魅力が半減だ)、SUBPHATTYはUIの設計もとてもバランスが良い。ディスプレイ類が皆無な点も個人的にはとても嬉しい(音色はボタンの組み合わせで16個メモリー可能)。

早いものでMoog博士が他界されてから既に8年になるが、単なる「ブランド品」ではない、レコーディングからライブまで、プレイ派から打ち込み派まで幅広い局面で素晴らしい働きを見せてくれそうな製品の完成に、きっと博士も天の上から満足そうなほほ笑みを送っているのではないか、とそんな気にさえさせてくれる一台だ。